派遣労働は現代の一般的な労働形態の一つです。最近ではトラブルに巻き込まれ、契約違反が起こることが増えています。
本記事では、ニュース記事をもとに派遣で契約違反にあった場合の解決法について解説します。
給与未払いや違法な労働条件などの事例を取り上げ解決策を紹介します。契約違反に遭遇した際の適切な方法を学びましょう。
派遣の契約違反|給与未払い・派遣会社とのトラブル事例
酷すぎる派遣会社と対峙、49歳男性救った「知恵」
「退勤時刻を17時半から17時に繰り上げてくれませんか」
ヒデアキさん(仮名、49歳)が初勤務を終えて帰ろうとすると、建物の外で待ち構えていた派遣会社の担当者からこう持ちかけられた。「派遣先の要望なので。書類を作り直しますね」。担当者は一方的に話を進めようとしたという。
しかし、勤務時間のカットは収入減を意味する。時給1200円だったので、ざっと計算しても月1万円以上の減収。ヒデアキさんには共働きの妻と3人の子どもがいた。収入ダウンは死活問題だ。「困ります」と抵抗するヒデアキさんに対し、「(勤務時間の変更は)ときどきあること」と言い張る担当者。押し問答の末、ヒデアキさんが「そんなの契約違反ですよね」と語気を強めると、ようやく引き下がったという。
残業代が支払われていなかった
さらには悪質な賃金未払いにも遭遇した。あるとき、ヒデアキさんが給与明細を確認したところ、有給休暇取得日の賃金と残業代が払われていないことがわかったのだ。本来振り込まれるはずの金額より1万円ほど少なかったという。
ヒデアキさんが担当者にメールで問い合わせると、有休については会社側が手続きを忘れていたこと、残業代未払いについては派遣先会社が勤務時間を15分単位で切り捨てているからだという旨の説明があった。有休分の支給は翌月になるが、もし早く振り込んでほしいなら別途前借申請をするようにとの“アドバイス”まであったという。
ヒデアキさんは「会社のミスなのに、なぜこっちが申請しなければならないのか」と憤る。それに労働時間は原則1分単位で計算するよう、労働基準法で定められている。ヒデアキさんが派遣先の計算方法は違法だと指摘すると、またしても耳を疑うような答えが返ってきた。会社側の主張を、ヒデアキさんの携帯に残っているメールの履歴から抜粋してみよう。
「(労基法の規定は)認識しております。ただ『15分単位の計算』自体は違法ではありません。~中略~(派遣先が15分単位で切り捨てていると説明したのは)お支払いしないという意味ではなく、どのような計算でそうなったかという質問に対する意味でした」
これはただの屁理屈なのでは……。繰り返すが、ヒデアキさんは発行済の給与明細を見て、「お支払い」されていないから問い合わせをしているのだ。
派遣会社の担当者から送られてきたメールの一部。「残業1時間20分→1時間15分」など、ご丁寧に計算方法まで説明している。ヒデアキさんが15分単位の切り捨ては違法だと指摘すると、「計算自体は違法ではない」という屁理屈が返ってきた(筆者撮影)賃金未払いについては、腹に据えかねたので労働基準監督署に訴えた。ただここでも最初は窓口の相談員に門前払いされそうになる。ヒデアキさんがメールの履歴などを見せて食い下がったところ、ようやく労働基準監督官が現れて申告を受理。後に派遣会社は是正勧告を受けたという。
労災申請もまともにとりあってもらえず…
極めつきは労災をめぐるトラブルだ。
ヒデアキさんの仕事は倉庫内でのピッキング。昨年10月なかば、脚立に上り、棚の最上段から段ボールを降ろそうとしたとき、右ひじに激痛がはしった。荷物の重さはおよそ10キロ。途中で放り出すわけにもいかず、なんとか床まで降ろしたものの、後日、病院で「上腕骨外側上顆炎」、いわゆるテニス肘と診断された。
労災の可能性が高い。ところが、ヒデアキさんが会社側の作成した申請書類を確認したところ、高い場所から重い荷物を降ろす作業中だったことについて一切触れられていないことがわかった。代わりに「縦横1センチ、高さ15センチの製品を持ち上げる通常作業」との記載があった。縦横1センチ、高さ15センチといえば、ボールペンほどのサイズにすぎないではないか……。なぜ荷物の重さを書かないのかと抗議すると、担当者は「上司が書かなくてもよいと言った」と責任転嫁する始末。最後は「あなたの行為は業務妨害です」と逆切れされたという。
〜中略〜
このほかにも、ハラスメント相談窓口を利用しようとしたところ、肝心のパスワードが周知されておらずアクセスできなかったとか、対面で行ってきた更新手続きをヒデアキさんだけ郵送に切り替えると通告されるなど、問題を上げるとキリがないという。
昨年末にはうつと診断され、現在は個人加入できるユニオンに入り、会社側との話し合いを続けている。
東洋経済オンライン
契約違反の内容
今回の事例での契約違反のポイントは以下のとおりです。
- 派遣先の要望なので。書類を作り直しますね」。と担当者は一方的に話を進めようとした。
- 勤務時間のカットに書類を作り直したこと。
- 有給休暇取得日の賃金と残業代が払われていないこと。
- 医師の診断があるにも関わらず派遣会社が労災を隠そうとしたこと。
このような経験がないか確認してみましょう。契約書の作成を再び依頼された場合は、最初に交わした契約書を取っておきましょう。派遣会社の都合のいいように書き換えられていないか確認できます。
対処法の解説
押し問答の末、ヒデアキさんが「そんなの契約違反ですよね」と語気を強めると、ようやく引き下がったという。
ここで重要なことは
すぐに契約違反に気づけたのは労働法に関する知識があったからだと思います。派遣会社から契約書の作成のし直しの依頼があったら、どの部分がどのように変更になるのかを担当者に確認しましょう。
賃金未払いについては、腹に据えかねたので労働基準監督署に訴えた。ただここでも最初は窓口の相談員に門前払いされそうになる。ヒデアキさんがメールの履歴などを見せて食い下がったところ、ようやく労働基準監督官が現れて申告を受理。後に派遣会社は是正勧告を受けたという。
ここで重要なことは
相談員に門前払いにされそうになっても、メールの履歴などを見せて食い下がったことです。労働基準監督署では相談に親身になってくれる職員もいれば、そうでない職員もいます。記録をもとに真剣に相談に来たことを伝えることが大切です。
労働組合への相談
昨年末にはうつと診断され、現在は個人加入できるユニオンに入り、会社側との話し合いを続けている。
ここで重要なことは
個人で加入できるユニオンへ入って話し合いを継続していることです。労働組合に加入することで専門的な知識を得て交渉することができます。また、うつ病と診断されたことにより、労災申請の可能性あります。
トラブルにあった時の対策
トラブルに巻き込まれても対処できるように知識を増やしておきましょう。
以下のことを常に意識しておきましょう。
- 記録をとっておく
- 最低限の労働法の知識を身につける
- 相談窓口に連絡する
- 必要な場合は労働組合に加入する
ここに書いてあることはとても重要です。
記録をとっておく
トラブルの内容や日時などを詳細にメモしましょう。関係者とLINEのやり取りがあれば、スクリーンショットも有効です。
最低限の労働法の知識を身につける
労働基準法や派遣労働法などの基本的な労働法の知識を持つことは重要です。
また労災隠しは違法です。
相談窓口に連絡する
トラブルが発生した場合は、労働基準監督署や労働相談所などの相談窓口に連絡しましょう。専門家から適切な助言や支援を受けることができます。
必要な場合は労働組合に加入する
労働組合に加入することで、組合のサポートや共同行動の力を借りることができます。労働条件改善や法的手続きなど、トラブル解決に役立つでしょう。
対策を講じることで、派遣労働におけるトラブルに対処する準備が整います。
私の体験談も掲載していますので興味のある方は以下の記事をご確認ください。
派遣の契約違反| 違法な労働条件の事例
港湾荷役の労災で派遣先を送検 船橋労基署
2022.02.25 【労働新聞 ニュース】
千葉・船橋労働基準監督署(花坂泰秀署長)は、昨年11月に船橋中央埠頭で、フォークリフトの積荷と地面に積まれた資材に挟まれて作業員が死亡した災害に関連し、港湾荷役業の㈱丸徳(同県千葉市)と同社船橋営業所長を労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いで千葉地検に書類送検した。
現場にいた被災者を含む4人中3人が他社に雇用されていたが、実態として同社に派遣されていたとみて、労働者派遣法第45条(安衛法の適用に関する特例等)の読み換え規定を適用し、同社らを使用者とみなした。同所長は現場にはいなかったが、当日の作業計画を作成していた。誘導員を配置しないまま、フォークリフトとの接触の恐れがある箇所に労働者を立ち入らせた疑い。
港湾荷役は派遣禁止業務だが、同労基署は聞取り調査などで指揮命令系統を明らかにし、実態は派遣であると判断した。
【令和4年2月8日送検】
労働新聞社
契約違反の内容
- 現場にいた被災者を含む4人中3人が他社に雇用されていたが、実態として同社に派遣されていた(労働者派遣法第45条(安衛法の適用に関する特例等)の読み換え規定違反)
- 誘導員を配置しないまま、フォークリフトとの接触の恐れがある箇所に労働者を立ち入らせた
通常労働法に馴染みがないまま働いている場合が多いですが、死亡事故が起きてからではあとのまつりです。働いている環境に応じた労働法を確認しておくと、異変を感じた時にすぐに対応することができます。
労働安全衛生法第20条(事業者の講ずべき措置等)違反の疑いとは
労働安全衛生法第20条は、機械や設備による危険、引火物や電力、熱による危険等による危険が労働者に及ばないように防止することを事業者に義務付けています。
今回の事例では以下のようなこと疑いとされています。
同所長は現場にはいなかったが、当日の作業計画を作成していた。誘導員を配置しないまま、フォークリフトとの接触の恐れがある箇所に労働者を立ち入らせた疑い。
労働新聞
『このくらい大丈夫だろう。』という認識の甘さが死亡事故を引き起こすきっかけになります。労働者の生命や尊厳を守るためにも自分が働く環境に関する労働法について学んでおくことが重要です。
派遣の契約違反| 法律を味方につけよう
労働基準監督署やハローワークにすぐに行けなくても、インターネットで必要な情報を入手できる時代です。法律の知識を身につけておくことで、思わぬトラブルから身を守ることができます。厚生労働省のハンドブックを活用しましょう。
『知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~』
厚生労働省のサイトよりハンドブックが作成されています。
以下に添付しておきますのでご活用ください。
(注意事項)
ハンドブック『知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~』は利用規約等に従って、どなたでも自由に利用できます。但し、コンテンツ自体を商品として、譲渡し、または頒布することはできません。
PDFファイルは以下をクリックしてください。
知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~[2.7MB]
総合労働相談コーナーでは・・・
- 解雇、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を対象としています。
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- 労働者、事業主どちらからの相談でもお受けします。
- 学生、就活生からの相談もお受けします。
- 外国人労働者等からの多様な言語による相談もお受けします。
- 専門の相談員が面談もしくは電話で対応致します。
- 予約不要、ご利用は無料です。
- 相談者の方のプライバシーの保護に配慮した相談対応を行います。
- 「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づき、労働相談をお受けするほか、「助言・指導」や「あっせん」をご案内しています。
- 労働基準法等の法律に違反の疑いがある場合は、労働基準監督署等の行政指導等の権限を持つ担当部署に取り次ぐことになります。
- ご希望の場合は、裁判所、地方公共団体(都道府県労働委員会など)、法テラスなどの他の紛争解決機関[PDF形式]を情報提供致します。
総合労働相談コーナーの所在地
各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内などの379か所に設置しております。
厚生労働省
このほか、具体的な助言や支援を求める場合は労働相談所や弁護士に相談することも有益です。
まとめ
給与未払いや違法な労働条件などの事例を取り上げ解決策を紹介しました。適切な対応方法を身につけておきましょう。
どんな時でも記録をとっておくことは重要です。
泣き寝入りすることなく契約違反の際に役立てましょう。今回の記事がお役に立てば幸いです。
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