『この一年求人募集しているのに面接に誰も来なかった。』『退職者が続き閉鎖を余儀なくされている。』というような施設が近年増加しています。そのため介護に対して明るい未来が描けないという方が増えてきました。
今回は介護の人手不足が当たり前になってしまった原因と介護業界がこれからどうなっていくのかをお伝えします。この記事を最後まで読むことであなたに一番合った未来の働き方を知ることができます。
なぜ介護の人手不足は当たり前なのか
結論から人手不足に陥っている介護施設の原因は経営者が目先の利益を優先させ現場の職員や利用者への思いやりに欠けた経営をしているからです。
動画のコメント欄には多くの介護士さんの切実な現実をすることができます。
動画内では特養を1年間に介護士が辞めた施設が94%に上るというニュースが取り上げられました。
その一方でマッチョだらけの介護施設の経営者の話は介護施設の成功事例です。この施設では趣味のボディビルを活かし、職員が空いた時間でトレーニングができる環境を提供しています。その結果マッチョな介護士を集めることができました。
国からの介護報酬は一律です。それをどう運営するかはそれぞれの施設によって異なります。結局は経営者次第で施設を良くも悪くもできるのです。
以下の問題に真剣に取り組むことが重要です。
- 職場環境を整える
- 教育体制を仕組み化する
- 職員が辞めない原因を追求する
経営者の資質が施設の人員不足に直結しているということです。
資格が無駄になってしまう環境
せっかくの国家資格を生かすことができない状況を見ていきましょう。以下は厚生労働省の最新のデータです。
第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について
令和3年7月9日に第8期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を公表しました。
これによれば、
・2023年度には約233万人(+約22万人(5.5万人/年))
・2025年度には約243万人(+約32万人(5.3万人/年))
・2040年度には約280万人(+約69万人(3.3万人/年))※()内は2019年度(211万人)比
の介護職員を確保する必要があると推計されています。(「第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(令和3年7月9日)」別紙1より)
厚生労働省
厚生労働省の試算から介護士不足は今後2040年までに約69万人不足すると言われています。
個人的にはこの数字以上に不足すると思います。なぜなら現在介護士として働いている人の多くが満足して働く環境ではないからです。潜在的に辞めるつもりで働いている介護士を含めるとこの数字以上であることは確実です。
無資格未経験で働きながら介護福祉士の資格取得までに要する期間は最低でも5年です。過酷な状況で働きながら学びとった資格を活かせない環境が年々増加しているのはなぜでしょう。
資格に見合うだけの給料や労働環境が用意されていれば介護士が不足するような事態にはならないはずです。
人手不足のスパイラル
人手不足に陥っている施設の負のスパイラルをわかりやすくまとめてみました。
ステップごとに取り組む課題ができている施設は人手不足を解消できるでしょう。そこには経営者や上層部がどれだけ努力できるかが重要になります。
- なぜ辞めるのか理由を確認
- 原因を調べて労働環境の改善に取り組む
第一段階でこのことに気づき対策を行えばまだ救いはあります。
- 残った職員に対しての労働改善
- 人材確保(職員へ説明し、期限を切ってそれまでに人材確保)
人手不足で一番負担がかかるのは残された職員です。職員に対してのフォローが大事です。
- 評判の良い施設の情報を集める
- 自分の施設に何が足りないかを比較し改善する
ハローワーク、求人情報サイトへ掲載しても人手不足が解消されない理由は施設の評判が良くないからです。特に他の施設との連携がないと自分の施設がブラックであることすら気づいていない場合があります。
- 職員へ謝罪
- 自ら現場に出る
自ら現場に出て職員として働くことが大事です。残ってくれた職員に対してコミュニケーションは取れていたでしょうか。
閉鎖に追い込まれる施設にはこのように何度か改善の余地があったはずです。経営者の資質が問われるのはそのためです。
介護の人手不足が当たり前への対策
一般的に人手不足に陥っている施設が行う対策を紹介します。あなたの施設はどうでしょうか?
外国人労働者の受け入れ
ベトナム、ネパール、中国、インドネシアなど様々な国から介護士として働くために日本に来ている学生は優秀です。そんな留学生を迎え入れる施設には大きく分けて2つのパターンがあります。
- 人手不足ではないが外国人労働者を積極的に受け入れている
- 人手不足で外国人労働者を頼るしかない
人手不足ではないが外国人労働者を積極的に受け入れている施設
早い段階から留学生を受け入れるために環境を整えている施設は良い施設である可能性が高いです。介護に真剣な経営者ほど先を見越して行動に移します。
留学生と職員が共に働きやすい環境を整え協力しあって仕事ができるように早い段階から準備します。そのため留学生が帰国して自分の国で介護施設を運営するという高い志を持って働くことができます。
人手不足で外国人労働者を頼るしかない
求人をかけても全く応募がなく、人手不足が続き職員が持ち堪えられなくなった施設は最終手段として外国人労働者を雇い入れます。このような施設は上層部が現場のことを把握していないケースが多いです。
『安易に人を入れたために習慣や文化の違いから毎日出勤しない。』ことや『そもそも人手不足だった施設で自分の仕事をしながら仕事を教えなければいけない。』など。現場の職員の負担だけが増えてしまいます。
定年の延長・高齢者を雇う
深刻な人手不足に備えるために国も定年延長の政策を積極的に推進しています。
1.65歳までの雇用機会の確保
(1)60歳以上定年
従業員の定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上とする必要があります。(高年齢者雇用安定法第8条)
(2)高年齢者雇用確保措置
定年年齢を65歳未満に定めている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、「65歳までの定年の引上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年の廃止」のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施する必要があります。(高年齢者雇用安定法第9条)
厚生労働省
「継続雇用制度」とは、雇用している高年齢者を、本人が希望すれば定年後も引き続いて雇用する、「再雇用制度」などの制度をいいます。
この制度の対象者は、以前は労使協定で定めた基準によって限定することが認められていましたが、高年齢者雇用安定法の改正により、平成25年度以降、希望者全員を対象とすることが必要となっています。
なお、継続雇用先は自社のみならずグループ会社とすることも認められています。
この政策も介護現場にとっては厳しいのが本音です。
現場では転倒や事故防止のため、入浴介助や車椅子への移乗などの業務を高齢の介護士に依頼することを避ける傾向にあります。人手不足だからという理由でその場凌ぎの対策をしたところで根本的な解決にはならないのです。
介護の人手不足の未来
人手不足を解消するために準備されている介護の未来についてみてみましょう。
介護ロボット
今後、介護ロボットは人手不足を補う上では欠かすことのできない役割を担うことになるでしょう。
介護ロボットにはさまざまな機能が搭載されています。実際にどのような機能があるのかを知っておくことでロボットに代替できる業務を把握できます。
現在以下のような機能を持ったロボットが出てきています。
- 移乗介助の機能・・・ベッドへの上り下りや、車いすへの移動などをスムーズに行う
- 移動支援の機能・・・要介護者が歩いたり、荷物を運んだりすることをサポートし、移動の補助を行う
- 入浴時の補助機能・・・入浴の一連の動作を補助を行う
- 排せつ時の補助機能・・・排せつのタイミングを予測しトイレへ誘導する
- 見守り機能・・・24時間どこからでも見守りが可能
- 介護情報の収集機能・・・その人にはどのような介護が必要なのか、今後何をすべきかなどが判断する
介護職に対する待遇改善
岸田政権は2021年11月19日閣議決定において「介護職員処遇改善臨時特例交付金」を新設しました。この政策は「2022年4月から福祉・介護職員を対象に、収入を3%程度(月額9000円)引き上げるための処置を実施する」とするもの。対象期間は2022年2月〜9月までとしていますが、10月以降も継続して賃金の改善が行われる予定です。
厚生労働省福祉・介護職員の処遇改善」(2022年8月19日)
経営者に問われること
世の中の流れや国の政策の後押しで人手不足改善の流れは広がっています。しかし、経営者が自分の私利私欲を優先するような施設は職員を集めることがますます困難になっていくでしょう。
なぜならSNSにより様々な情報を得ることができるからです。その拡散力は強い影響を持ちます。良い施設も悪い施設も明らかにされる現在においてブラック施設が淘汰されていくことは時間の問題です。
まとめ
今回は介護の人手不足が当たり前になってしまった原因とこれからの介護業界について解説しました。
これから先、働く上での選択肢は経営者ではなく介護士にあります。正しい情報をいち早く集めましょう。働きやすい環境の施設で働けるように参考にしていただければ幸いです。
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